『君のクイズ』を見た。
総評としては「面白かった」と形容しても良いのだが、ちょっとそれで済ますにはあまりにノイズが大きかったのでつらつらと書く。
と言っても、結局言いたい文句は1つだけだ。
人間を馬鹿にするな。
これだけ。
三島と本庄の描写は見事だった。
これでもかと詰め込まれたリフレインと対比の描写は、心情描写に対して余念がなかった。
思考回路のCG化も凄まじく、ケレン味のある演出だけれどきちんと2人のクイズプレイヤーにマッチしていた。
だが、問題はそれ以外だ。
三島と本庄以外。モブが徹底的に衆愚として取り扱われていて不快だった。
特に思うのは、三島本庄以外のクイズプレイヤーに対してだ。
「気持ち悪い」のひと言で言語化して満足したり、「勉強してから来い」なんて突き放したり、クイズプレイヤーという存在を異質な者、はっきり言えば社不のように取り扱っているのが不快だった。
超人的に見える押しは、徹底的なロジックの積み重ねでしかない。
膨大なメモリーサイズは、それぞれの人生に紐づいた単なる記憶であり、それは辞書でもなんでもない。
圧倒的な思考の速さは、日々の努力や鍛錬、場数によって会得した物に過ぎない。
クイズプレイヤーも、解体すれば1人の人間だ。
あそこに居た準決勝敗退のメンバーにも、各々に人生があり、各々に喜びがあり、各々に悲しみがあり、各々に抱えている物がある。その酸甘の全てをひっくるめて肯定する事ができる『クイズ』という営みに打ち込んでいるのがクイズプレイヤーであって、その営みは世界と自己とを繋ぐ物であるはずだ。本作ではクイズをそういう物として描いている。
だが、作中での取り扱いはどうだっただろうか。
普通の人間が、一人の人間を「気持ち悪〜い」と一言で形容するような仕草をするだろうか。
普通の人間が、無知蒙昧な素人の素朴な疑問に対して突き放すような事を言うだろうか。
私は、彼ら彼女らを異常者として取り扱い、人間として見なかった事を軽蔑したい。
それはクイズという人間の営みの否定に他ならない。
他のモブの描写も酷かった。
タレントをアイドル的に推すファン。インターネットの声。ゴシップ系YouTuber。
この作品でモブとされるあらゆるキャラクターが徹底的に衆愚的に描かれていて、不快だった。
0文字回答と6文字回答が本質的に別物である事は素人にも分かるし、盲目な全肯定ファンなんか極一部だし、インターネットにも善性はあるし、あんな典型的なYouTuberもまず居ない。
人間はそんなにバカじゃない。
2人の天才。という点を際立たせるために、演出的な都合で、それ以外全てを愚者としたのは明確に失敗だと思う。
クイズを通じた人間讃歌を描く作品が、人間を矮小に描くのは明確に間違いだ。
人間を称えながら人間を愚弄するな。
表層的なメッセージの為に、深みのほとんどを犠牲にするな。
それぞれに生きているのだという当たり前の事実から目を背けるな。
他我を理解しろ。独我論に傾くな。誰も哲学的ゾンビではない。私は生きている。人間は生きている。80億の他我に向き合え。途方のなさに絶望しろ。世界を理解する営みこそがクイズだ。
あとトリエルとの別れのシーンはあんま泣くとこじゃ無いだろ。いいシーンだけどさ。

category : 無し
2026年6月5日の日記
2026-06-05T19:36:04.474Z